サンワサプライから発売されているA3フラットベッドスキャナーPSC-12UF(以下、本機)をAmazonで購入しました(ヨドバシカメラのポイント還元より断然お得!)。
全体が黒で統一された筐体とテクスチャー感のあるカバーが高級感を醸しています。
本機の前バージョンと思われる400-SCN025や今回競合機種に見立てたエプソンDS-50000は、Amazonや価格.comにレビューが掲載されていますが、本機は2019年9月17日現在どちらにもありません。
「価格.comの登録日」は2018年11月28日、「Amazon.co.jp での取り扱い開始日」は2019年2月14日ですので少なくとも6ヵ月以上は経過しており、レビューがあってもおかしくないのですが…。
そこで選択肢が非常に少ないA3対応フラットベッドスキャナーで、Mac接続でのグラフィック用途として本機のご購入を迷われている方のため、実際に購入・使用して確かめたポイントをレビューします。
結論を先に申し上げると「基本的な機能で十分という方なら本機は買い」です。「教科書どおりのことしか信じない、みんなと同じじゃないと不安」という方にはおすすめしません。
なおPSC-12UFって何?という方はメーカーサイトで詳細をご確認いただけます。
用途はペイント作品のデータ入稿
スキャニング面のカバーは手前から開きます。原稿の出し入れがスムーズです。
厚手の原稿にはカバーの根元が上部にスライドし対応します。
今回A3フラットベッドスキャナーを購入した目的は、アクリル絵の具で描画したイラストのデータ入稿を行うためです。従来使用してきた「パットリくん」が故障したため買い替えることにしました。
原寸サイズで350dpiあれば商業印刷に使用できるので、単純なスキャニング作業だけに焦点を当てれば本機(フルカラー24bitのA3で1200dpi)は十分使えます。加工やレタッチはAdobe Photoshopで行うというスタイルです。
競合機種はエプソンDS-50000
一般にグラフィックで業務用として使用するのであればDS-50000クラス以上が必要と言われています。その根拠は主にスキャン方式によるものと思われます。
DS-50000はCCD方式であり被写界深度が深く、原画に多少ヨレがあっても、ぼやけたり、モアレが生じることが少ないのが特徴(*1)です。
一方本機はCIS(コンタクトイメージセンサー)方式です。被写界深度が浅いことから、折り目やヨレ、細かい模様などに比較的弱いのが欠点です。ただしCCD方式と比べ構造がシンプルでコンパクト化しやすいというメリットがあります。
*1:参考 エプソンホームページ
背面にDCジャックとUSBポートがあります。付属のUSBケーブルでパソコンと接続します。DS-50000には別売の「ネットワークインターフェイスパネル」が用意されており複数のパソコンで共有することが可能です。拡張性は劣りますがフリーランスや小オフィスでの利用なら「なくてもよい」機能なのかもしれません。
モアレ対策
従来使用してきた「パットリくん」もスキャン方式はCISでした。モアレが発生することは稀で、その際はAdobe Photoshopの「コピースタンプツール」でレタッチを施していました。テクニックとしては「ペン先にぼかしをつける」「不透明度を下げて重ねる」「流量を下げて重ねる」などを駆使します。モアレの程度によりますが、これで十分対応できました。
CIS方式でのスキャンで過去6年以上データ入稿を行ってきましたが、画質についてクレームが生じたことはありません。そこで本機の購入にはさほど抵抗がありませんでした。
PSC-12UFの価格はDS-50000の約半分
DS-50000の価格.comでの最安価格は2019年9月17日現在11万2800円(8%税込)です。一方本機のAmazonでの購入価格は2019年9月13日時点で6万2199円(8%税込)。DS-50000よりおよそ45%安い価格で本機を購入できたわけです。
この価格差がすなわちCCD方式とCIS方式の違いに現れているのでしょう。もしもCIS方式でかまわなければ、この価格はかなり魅力的です。
サイズ比較
DS-50000は幅640mmx奥行468mmx高さ156mm。本機は幅565mm×奥行394mm×高さ54mm。一目瞭然のサイズ差です。
じつは狭い仕事場では、この差はとても大きい。本機を購入する決め手は第一に価格でしたが、2番目はサイズのコンパクトさでした。
A3サイズをフルカラーでスキャンできる解像度は?
本機を購入する前、わかりにくかったのが商品サイトで解説している解像度でした。
「最大2400dpiの高解像度」を謳っていますが、その解像度のものをフルカラー24bit(1677万色)・A3サイズでファイル出力できるものではありません。本機は48bitでスキャンし、加工対応後24bitでファイル出力します。それには限度があるというのです。ではその限度とは何なのか。
同サイトをよく読むと「製品詳細」に
※2400dpiでスキャンする場合には一部制限があります。 データ容量が800MB以下になるようにソフトで設定をしてください。出力サイズはA5サイズ以下にしてください。
とあります。これは「800MB以下かつA5サイズ以下」ということでしょうか。
もっとわかりやすい説明が商品購入後に同封されていたシートにありました。
-注意-
・本製品は2400dpiの解像度に対応していますが、
スキャンサイズが限定されます。
設定より、出力サイズをA5サイズ、または出力サイズの横に表示されるファイル容量が800MBより下になるように設定をしてください。
なるほどA3サイズをスキャンするにはファイル容量が800MB未満になるよう解像度を調節してあげればよいということなのですね。
試しにA3サイズである29.7cm×42cmを1200dpiでスキャン(24bit)してみました。出力されたファイルは297.52mm×41.872mmでファイルサイズは795.5MBでした。ぎりぎり規定の800MBをクリアしています。サイズが若干異なるのは謎ですが、ほぼ1200dpiまではスキャン解像度を上げることが可能なようです。
一般の商業印刷(350dpi推奨)に用いるなら、これよりひとつ下の600dpi(任意の値は不可)を設定してもよいでしょう。
なおファイルサイズの計算法についてはこちらのサイトが詳しいです。
Macはつながるの?
また商品サイトの「対応機種」の表記にも悩まされました。
「対応機種」として「Windows搭載(DOS/V)パソコン」とあります。しかしそのすぐ下には「対応OS」が「Windows 10・8.1・8・7・Vista・XP mac OS 10.12~10.14、Mac OS X 10.7~10.11」となっているのです。
これを額面どおり受け取ると「macOSならWindowsマシンに搭載されたものに限る」となります。
あまりにレアすぎるのでサポートに問い合わせてみるとiMacでもOSのバージョンが適合していれば大丈夫との回答でした。
ただし実際に使用することはできたのですが、その機能は限られました。
Windowsマシンで使えてMacで使えない主な機能
1.付属のインストールDVDは使えません
付属の取扱説明書にはMacでの使用についての説明は一切ありません。これには相当焦りました。商品ページからリンクされている「取説・組立説明書」のPDFページでようやく最新の取扱説明書にたどりつくことができ、Macに関する情報を確認することができます。
そんな状況ですから、当然付属のインストールDVDはWindows版です。Macで使えるようにするにはMac用ドライバーソフトをサンワサプライWEBサイトからダウンロードしなくてはなりません。
インストーラーをダブルクリックで起動させようとすると「Appleに認証されていないアプリのため開けない」という旨のアラートが表示されました。右クリック(長押しクリック)で表示される「開く」から起動することでようやくインストールを始めることができました。
2. 設定メニューが豊富なViiScanが使えません
スキャン設定を行う際の詳細なメニューパネルとなるのが本機の場合スキャニングソフト「ViiScan」です。Macではこれが「詳細情報」画面に簡略化され、設定が大幅に制限されます。
Macでは
・スキャンデータのデータ容量が自動表示されません。
・「プリント」「Eメール」「PDF」などのファイルの出力先が選べません。
・TIFF形式で保存する際、圧縮か非圧縮かが選べません(Macの場合自動でどう処理されるのかサポートに問い合わせ中です)。
・カラーや明るさを自動で処理する「レベル調整」ができません。
・色褪せた写真から本来のカラーを回復する「色回復」ができません。
・ごみを自動で取り除く「粉塵除去」ができません。
3.本体側の操作ボタンは電源以外使えません
本体側に「プリント」「Eメール」「PDF」の出力先選択ボタンと「予備スキャン開始」ボタンが用意されていますが、Macではまったく反応しません。これらのボタンはWindowsのドライバーソフトに「ViiScan」と同梱されている簡易版の「EventUtility」で操作可能となります。
なるほど「対応機種Windowsマシン」の根拠はこれらの機能がすべてできることにありました。
それでもMacでこれだけのことができる
本機をMacで使用する際はmacOSに標準装備されている「イメージキャプチャ」を起動します。
わが家のiMacでは「ランチャー」の「その他」のフォルダに入っていました。今後使いやすいように「Dock」の前面に配置しています。
「イメージキャプチャ」を起動すると画面右側にスキャンを設定する「詳細情報」が表示されます。
その主な項目を解説します。
[1]種類:「カラー」のほか「白黒」「テキスト」が選べます。前述の「ViiScan」から「カラー」は24bit、「白黒」は1bitと推測されます。
[2]解像度:200bit、300bit、600bit、1200bit、2400bitの中から選べます。任意の値を設定することはできません。一般的な商業印刷の場合、600dpiでスキャンし、Adobe Photoshopなどの画像処理ソフトを使い使用サイズの原寸で350dpiとなるようリサイズしてから入稿するとよいでしょう。
[3]カスタムサイズを使用:チェックを入れておくと、必要な任意の範囲を指定し、無駄なくスキャンできます。
[4]サイズ:[3]でドラッグによって指定した範囲が自動的に表示されます。値を直接入力し、範囲指定された領域をドラッグで移動することもできます。
[5]自動選択:プルダウンメニューから「1つのボックスにまとめて検出」を選択しておくことをおすすめします。そのほかの場合、複数の範囲が検出されてしまいます。
[6]スキャン先:まぎらわしい項目名です。機能はスキャンしたデータの「保存先」です。ここでは「デスクトップ」を選択しています。任意のフォルダを指定することもできます。
[7]名前:保存するスキャンデータのファイル名を任意の文言で指定することができます。
[8]フォーマット:保存するスキャンデータの画像形式を選択できます。Web用途では「JPG」が一般的ですが、画像の劣化が懸念されます。ここは劣化の少ない「TIFF」でいったん保存しておき、使用用途によって別名保存から画像形式を変えるのがおすすめです。
[9]イメージ補正:「マニュアル」を選択すると「明度」「色合い」「色温度」「彩度」を細かく変更できます。
[10]デスクリーン:写真などをスキャンする際に発生するモアレ(まだら)を低減します。
[11]テキストエンハンスメント:文字を際立たせます。
[12]アンシャープマスク:画像のコントラストをピクセル単位で高めます。画像がシャープになる効果があります。
まとめ
本機とエプソンDS-50000ではスキャン方式に大きな差があり、CCD方式であるDS-50000のほうがぼやけやモアレ対策に優れています。しかしAdobe Photoshopをお持ちならばその差を縮めることができます。価格が約45%も安い、コンパクトであるという本機のメリットは魅力的です。
本機のWindows使用とMac使用ではWindows使用のほうが機能が豊富でおすすめです。そもそもWindows用途で開発されたものなのでしょう。しかし基本的なスキャニングさえできればよいという方ならMac使用でも満足できるはずです。
以上、PSC-12UFをMacで使ってみたレビューでした。判断材料にしていだければ幸いです。
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